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フルサイズ機とAPS機の違い
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今回はフルサイズとAPS機の違いについてご説明します。
※CANONなどではAPS-Hというサイズも存在していますが、ここではAPS機=APS-Cとしています。というのも、よく「やっぱり写真を撮影するならフルサイズを買った方がいいですか?」とか「APSのカメラではダメですか?」という質問をいただきます。
答えから言うと「APS機で十分」です。その理由を理解してもらうためには、フルサイズ機とAPS機の違いを理解してもらう必要がありますが、フルサイズ機とAPS機は文字通り「センサーサイズ」が違います。
ここでいうセンサーとは撮像素子のことで、まさにレンズを通して光を受け止める受光部分の大きさが違う、ということになります。で、センサーが違うと何が違うの?ということですが、まずは「画角」が変わります。
一番上の参考画像を見ていただくとわかる通り、同じ焦点距離で同じレンズを使った場合、フルサイズとAPSでは撮影できる範囲が違います。
これがよく言う「1.5倍相当」ということで、20mmのレンズで撮影するとAPS機ではフルサイズの30mm相当の画角でしか撮影できない、ということになります。
フォーサーズ機やコンデジ(1/2.3)ではもっと画角が狭くなる、というのが見てわかるかと思います。「え?そんなの自分が動けばいいんじゃない?」と思った方、正解です。
APS機に20mmのレンズを付けて一歩も動かずに「もうちょっと広く撮影したいなあ」なんて言う人がいたら、そういう人はさっさと写真撮影をやめた方が賢明です(笑)
そう、画角が狭くなるなら後ろに数歩下がればいいだけのことなんです。
(厳密には被写界深度の関係もありますので、後ろに下がっただけで同じ画が取れるとは一概には言えませんが…)ということは、画角の広さはフルサイズ機としてのアドバンテージにはなりえません。
あくまでこれはセンサーサイズの違いにより画角に違いが出ている、という程度のお話です。じゃあ、フルサイズの何がいいのよ?というと、答えは非常に単純です。
「センサーサイズが大きいので受光量が多い」ということです。こちらの画像を見ていただくとわかるように、レンズを通して入ってきた光がどれだけセンサーに当たるかと言えば、当然全体の面積が広いフルサイズの方が光は多く当たります。
面積を受光量として計算すると、フルサイズはAPSの約2.3倍もの光を受けていることになります。
光を多く受けることができれば、それだけ多くの情報を撮像素子が受け止めることができるようになり、結果として「白飛びや黒潰れが少なくなる」上に、「ノイズも減り、画質が上がる」わけです。
この受光量の多さによる画質の高さがフルサイズの最高の持ち味、と言っても間違いないでしょう。「じゃあやっぱりフルサイズを買うべきじゃん!」と思った方、ちょっと待ってください。
フルサイズにももちろんデメリットがあるのです。最近ではミラーレスのフルサイズ機も出回り始めましたが、簡単に言うとフルサイズ機は「デカくて重い」んです…(泣)
さらにフルサイズではAPS用のレンズは使えませんので、フルサイズ用のレンズを使うことになりますが…これがまたとにかく「高価」なんです。
本体も高価な上、レンズまで高価ということで、フルサイズ機は「とにかく金食い虫」なんです。
フルサイズ機で大三元のレンズをそろえた日には車1台買えるくらいのお金がすっ飛んでいきます。費用面だけではなく機能的にもデメリットはあります。
フルサイズは画角が広い分、被写界深度が浅く、画像のボケは綺麗に出ますが、逆に言うとAPS機に比べてピントがかなりシビアで合わせづらくなります。
まあ、画質がいい代わりにピンボケ写真ができやすい、ということですね。そしてこれがとどめですが「画面で見てる分には、APSと大して変わらない」んです。
画質がいい、と言っても低感度撮影で撮って出しのJPEGだったら、人間の目には大して違いはわからないんですよ…(泣)「じゃあ、なんでフルサイズなんて使ってるの?」ということになってしまいますが、その前に「APS機に比べてプロ用のフルサイズ機は画素数が低い」ということにお気づきでしょうか?
上の画像を見ていただくと、同じフルサイズセンサーに対し、画素数の違いでドットの大きさが変わっているのがわかると思いますが、実はこのドットの大きさが重要なポイントなのです。
ドットが大きい=1画素あたりの情報量が多い=同じダイナミックレンジならRAW現像などで救える範囲が広いということで、フルサイズ機はAPS機に比べるとRAW現像で綺麗に仕上げやすいということになります。
言い換えるなら「APSではうまく現像できないような写真でも、フルサイズなら捨てずに済む(歩留まりが高い)」というのがフルサイズのフルサイズたるゆえんだと言っても過言ではないでしょう。また、写真というのは厳密言うと、このドット単位でピントを合わせています。
画素数が少なければ少ないほどドットが大きくなるので、その分ピントが掴みやすくなりますし、画素数が高ければ高いほどドットが小さくなるので、ピント合わせがシビアになっていきます。
要するにフルサイズでは同じ画素数でもAPSよりドットが大きくなるため、ピントを掴みやすくなっている、ということなのです。「あれ?さっきフルサイズはピントが合いにくいって…?」言いましたよね(笑)
先ほどそう言ったのには大きく3つの理由があります。1つは「ピントをつかみやすいけど、その分ピントが逃げやすい」ということ。
フルサイズ機はドットが大きいのでAFでバキっとピントを掴んでくれますが、被写界深度が浅いため、ちょっとした動きですぐピントが逃げてしまったりするのです。2つ目に「フルサイズ機はフォーカスポイントが多く、しかも高性能」ということ。
先ほども言った通り、フルサイズはドットが広いため、AFセンサーをクロスにしやすいという利点があります。
クロスセンサーは位相差AF(画像のズレを判別するAF)が縦横で判定してくれるため、よりピントが合いやすいんですが、フルサイズだと60点以上のフォーカスポイントすべてがクロスセンサーというのがざらにあります。
ということは、どこでもピントを捕まえられる代わりに、ちょっとずれるとそこでピントを合わせてしまう、ということになり、狙った場所と違うところでピンを掴むなんてことがざらに発生してしまうのです。
(その分、AFが素早いためスポーツ撮影などでは異常なまでの強さを見せつけてくれます)最後に最近のフルサイズ機も画素数競争に巻き込まれているということ。
これは本当にバカな風潮だなぁと思いますが、高画素数=高性能ではないのに、画素数が高ければそれだけ画質がいいとか、良い写真が撮れると思っている方が多いということなのでしょうね…
最後の画像を見ていただけばわかると思いますが、フルサイズのセンサーとはいえ、画素数が上がれば上がるほど1画素あたりのドットは当然のごとく狭くなっていきます。
イコール、ピントを掴む範囲が狭くなってきてしまっているし、ドットが狭いということは1画素あたりの受光量が少なくなり、せっかくダイナミックレンジが広くてもノイズが発生しやすくなったりするから画質も落ちるんですが、まあここはピントだけのお話しということにしておきましょう…大きく3つの理由を上げさせていただきましたが、プロ用のフルサイズ機が画素数競争から離れたところにいる理由は、「ドットを狭くしないため」で、それによって「ピントを掴みやすく」して「画質も向上させる」ということを目的としています。
逆に言うとフルサイズで画素数を上げてしまうと、ドットが狭くなりピントも逃げやすくなり、画質が低下してしまう、ということになります。ということで、長々とお話ししてしまいましたが、フルサイズとAPSのどちらがいいか、という質問の答えとしては「プロ用を買うならともかく、中途半端に画素数の高いフルサイズを買うくらいならAPSで十分」ということがご理解いただけたかと思います。
写真を撮影するのに大事なのは機材ではなく、構図や着眼点だということはご理解いただいているかと思います。
あくまで機材は「撮影できる幅を広げる」ものにすぎません。
暗所撮影や動体撮影など、撮影の目的に合わせて撮影できる幅を広げるために機材を増やしていくのが一般的です。フルサイズから入るのを否定するつもりは毛頭ありませんが、どちらを購入するか悩んでいるのであれば、APS機を購入して、APSではどうしても満足できなくなってからフルサイズの購入を検討していただければ十分だと思います。
最初はAPSの安いカメラを購入し、レンズや周辺機材(ストロボやレフ版など)に投資していくのが賢明でしょう。