MTF曲線を理解しよう | Blog | R+R Computer Factory
  • MTF曲線を理解しよう

    by Megumu Akahori
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    20160420-01

    皆さんがレンズを選ぶとき、カタログやホームページで、こんなグラフを見たことはないでしょうか?
    これがいわゆるMTF曲線と呼ばれるものなのですが、このMTF曲線とは、そのレンズの「コントラスト再現性」を示したグラフなのです。

    では、このグラフに合わせてMTF曲線がどういうものかを順番に説明していきたいと思いますが、まずは左側のグラフから説明したいと思います。
    最初にこのグラフの横軸ですが、これは「空間周波数」を意味しています。
    空間周波とは1本が白→黒(黒→白)で構成されていて、それが連続でつながることにより波形を形成します。
    この波形こそが「空間周波数」なのですが、空間周波数の波の数は明暗差の量を、波の高さは明暗差の大きさを表しています。
    わかりやすく言うと、夜景のように「暗い中に色んな明るさが点在している」ような場合は波が多い画像で、夜空の月のように「明暗差の激しい」ような場合は波の高低差が大きい画像ということになります。

    またグラフに戻りますが、続いて縦軸はMTF(Modulation Transfer Function)と呼ばれる数値です。
    MTFとは、レンズを通過した時、「本来の空間周波をどれだけ受け止められるか」の割合をあらわしています。
    MTFが1だった場合、本来の空間周波を100%受け止められているということですが、MTFが0.5の場合、本来の空間周波は50%しか受け止められていないということになり、画像のコントラストは本来の50%のものとなる、という事になります。

    はい、ピンときませんね?
    ということで、先のMTF曲線を簡単に図にするとこのような感じになります。

    20160420-02

    こちらの図を見ていただくとわかると思いますが、グラフ上で空間周波数10本/mmの場合、MTFは0.8でしたので、レンズを通して受け止められるコントラストは本来の80%となりますさらに空間周波数40本/mmの場合、MTFは0.4でしたので、こちらのコントラストは40%ということになります。
    ということは、これだけでも「このレンズは明暗差の激しい写真には強いけど、星空や夜景など明暗差が点在するような写真は弱い」というのがわかると思います。
    要はこのレンズは「細かいコントラストの再現性が弱いレンズ」と言えるわけです。

    なお、余談になりますが、MTFの計算式は {(レンズ通過時空間周波数の上の値 – レンズ通過時空間周波数の下の値) ÷ (レンズ通過時空間周波数の上の値 + レンズ通過時空間周波数の下の値)} ÷ {(本来空間周波数の上の値 – 本来空間周波数の下の値) ÷ (本来空間周波数の上の値 + 本来空間周波数の下の値)}で計算します。
    上の図で10本/mmの空間周波数のMTFを計算すると{(170-60)÷(170+60)}÷{(200-50)÷(200+50)}=0.797≒0.8という計算になります。

    さて、今度は最初のグラフの右側を見てみましょう。
    左側のグラフと何が違うの?と感じられるかもしれませんが線自体は変わっていません(手抜きです)。
    先程のグラフでは横軸が空間周波数だったのに対し、今回は像高となっているところだけ変わっています。
    なぜ2種類のグラフを置いたかというと、このMTF曲線は各メーカーによって書き方が色々異なっているからです。
    最近では横軸に像高を置き、縦軸がMTF、点線と実践で空間周波数を表示する、というグラフが多くなっていますが、今回はそれぞれの項目を理解してもらいやすくするため、2つのグラフに分割してみました。

    で、この像高というのは「レンズの中心点からの距離」を意味します。
    このグラフの場合レンズの直径は56mmで、先程のMTFの解説をご理解いただいた方は「ああ、このレンズは中心はコントラスト再現力があるけど、周辺は弱いんだな」とすぐにご理解いただけたと思います。
    そこまでご理解いただけた方は、MTF曲線の完全理解まであと一歩ということろですが、もし「何?何?」と思ってしまった方はもう一度上から読み直してみてください。

    「あと一歩」の方は、ここでグラフに立ち返ってみてください。
    グラフの中にSagitalとTangentialという実線と破線の2本が存在していることに気付かれたかと思います。
    サジタルとタンジェンシャルの違いを語りだすと光学収差の話になっていきますので割愛しますが、「サジタルは同心円方向への像の流れ」で「タンジェンシャルは放射線方向への像の流れ」を意味しているということだけ理解しておいてください。

    20160420-03

    で、最初の右グラフですが、レンズの外側に行くにしたがって、サジタルの値が下がっているのがわかると思います。
    (普通はタンジェンシャルが落ちるので、ちょっとグラフ失敗しましたね、ごめんなさい)

    ということは、このレンズは外側に行けば行くほど、レンズの受け取る像が「同心円方向に流れやすい」ということがわかります。
    もしタンジェンシャルの値が下がっている場合はレンズの外に行くほど「放射線方向に像が流れやすい」ということですね。

    20160420-04

    上の図はそのレンズでパターン撮影した時の画像を模したものですが、ここからもわかるとおり、外側に行くにしたがって、同心円方向に像が流れ、レンズ端の解像度が下がっていることがわかると思います。
    これがMTF曲線におけるサジタルとタンジェンシャルの線の意味合いとなります。
    ※タンジェンシャルはメリディオナルと表現されることもありますので、ご注意ください。

    さて、ここまで読んでいただき、MTF曲線についてはだいたいご理解いただけたかと思いますが、最初のグラフにはさらに2本の線が入っていますね。
    これはズームレンズの場合によくある書き方で、ワイド端とテレ(望遠)端のそれぞれのMTFを表しています。
    ここまでついてこられた方には、最初のグラフを見ただけで「このレンズは望遠側の中心部分の解像度が低い」というのがすぐに理解できたかと思います。

    そもそもMTF曲線自体、がんばって覚えるようなものではありませんし、レンズの特性は撮影した画像を見たり、使っている人から聞いた方がより理解できると思います。
    が、まだ誰も使用していない最新のレンズを買おうとしているような場合、事前にチェックできるのはカタログスペック以外にありません。
    そういう時には一度この話を思い出していただき、MTF曲線を確認して、なんとなくレンズの特性を掴むことができれば「高いレンズだったのに買わなきゃよかった」という後悔を少しでも避けられるかもしれませんね。

    

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