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[独り夜話] ”COMPOSER” ~響き続ける旋律の調べ~
コメントはまだありませんタイトル:Team NACS 全国公演 ”COMPOSER” ~響き続ける旋律の調べ~
公開:2005年
出演:森崎博之・安田顕・大泉洋・佐藤重幸・音尾琢真ヴェートーベンの半生をオリジナリティ溢れる脚本で描き上げた舞台作品。
Team NACSの個性あふれるメンバーが初の全国公演に挑んだ記念すべき作品の一つ。Team NACSのファンの皆さんの評価はわかりませんが、個人的にはガッカリした作品で、正直「これでこの後、よく全国進出して公演を続けられたな?」と逆の意味で関心してしまったのを覚えている。
理由は簡単で「NACSらしさ」が全くと言っていいほど出ておらず、DVDは買ったものの途中で見るのをやめようかと思ったレベル。
この前のLOOSERやこの後のHONORに比べると「これは本当にTeam NACSの公演か?」と不安になるレベルだった。
まあ、初の全国公演でNACSらしさをあまり前面に押し出せず、無難にまとめようとした結果なのかもしれないが、それにしても残念な作品だと言わざるを得ない。NACSの舞台と言えば、とにかく前半は小刻みなギャグを中心として展開し、そのキャラクターを観客に印象付け、中盤からはその印象付けられたキャラクターの個々の心象をさらに観客に植え付けていく。そしてラストは温かい、涙するような盛り上がりを見せてくれるのだが、このCOMPOSERは前半からギャグの押し出しがすごく弱い。
歴史上の人物を登場させているし、しかも音楽家という設定なのでギャグを入れづらかったのかも知れないが、序盤で舞台に乗り切れない。たぶん自分以外にもそういうNACSファンも多かったのではないだろうか?
そしてそれにとどめを刺すように、音響と照明があまりにも弱く、掲載したキャプチャを見てもわかる通り、とにかく舞台が暗い。
まあ、モーツァルトについては「悪霊」という設定なので、登場時に暗くなるのはわかるのだが、それにしても全体が暗い。そして(これはDVDの問題かもしれないが)、セリフが聞こえないところもあるくらい声が小さい。
「え?今何を言ったの?」と巻き戻すこともしばしばあった。そして何回巻き戻しても聞こえないところはよく聞こえないというレベル。これで観客が乗ってくるわけがない。とにかくNACSの舞台では(というより森崎氏の演出では)、本人も言っている通り音楽と芝居の盛り上がりをバチっと合わせてくることが多く、COMPOSERはクラシックを使うということでエヴァンゲリオン的なクラシックと連動した舞台の盛り上げを期待していたのだが、中盤に至ってもたまにちっちゃいギャグが入ってくる程度で、何もキャラクターに感情移入できないし盛り上がってこない。
舞台途中で聞こえる観客の笑い声が他の公演に比べて少ないことがその盛り上がりの無さを物語っているといってもいいだろう。ただ、これだけは間違いなく言えるのは、NACSのメンバーはとにかく演技がうまいし(若干1名微妙だが…)、森崎氏の脚本と演出は見事と言うほかはない。このメンバーがそれぞれ今は全国で活躍しているのも当然のことと言えるだろう。
また別途夜話を書きたいと思うが、WARやLOOSER、HONORなどはNACSの舞台の名作と言っても過言ではない。それだけ実力者が揃ったチームだけに、「この脚本はTeam NACSに合っていなかった」と考えるのが正解だろう。
先にも書いた通り、恐らくは初の全国公演でNACSを知らない観客のためにもNACSらしさを抑えようとしたのではないかと思うが、それが結果あまりにもNACSらしくなくなってしまった、というのは皮肉な話しだと思う。
とは言え、現在はNACSの知名度も上がり、再び全国でもNACSらしさを見せてくれているのはNACSファンとして非常に嬉しい。芝居として成功したかと言われれば個人的には「これはない」と言いたい内容ではあるが、NACSの重要なターニングポイントとして、公演としては「成功」と言ってよいのかも知れない。
今後も引き続きNACSの芝居を楽しみにしたい。