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[独り夜話] トムとジェリー ~Tom & Jerry~
コメントはまだありませんタイトル:トムとジェリー
公開:1964年(日本初公開)MGM(吸収後はワーナーブラザーズ)の名作アニメーション。
ドラ猫トムといたずらネズミジェリーが繰り広げる、ドタバタコメディアニメーション。
現在は様々な理由から当時の放送通りの内容をTVで見ることはできない(後述)。自分が子供のころは毎日夕方にトムとジェリーがテレビで放送されていて、子供たちはみんなそれを楽しみにしていたので、「自然と門限を守っていた」という意味では非常に教育的なコンテンツだったのかもしれない(笑)
まあ、冗談はさておき、トムとジェリーのドタバタはどこかドリフターズのコントに似ていて、正直毎回起こることに大きな変化はないし、「ここでこうなる」とオチが読めてしまうのだが、それがわかっていても笑いを誘うというコミカルさがそこには存在していた。
またアニメーションでなければ絶対できないような表現もふんだんに盛り込まれていて、トムの指がピアノに挟まれて鍵盤状になってしまったり、うるさい音楽を聴かされたジェリーの頭が楽器の形に変わるなど、当時のアニメーションとしては画期的な表現手法も使われていた。
その「ありえなさ」ゆえに、このアニメが人気を博したといっても過言ではない。
昔自分は同級生とトムが吸うタバコ(一吸いで根本までいっきに灰になる)を何とか作れないかと試行錯誤したこともあるくらいだ。
(100%若気の至りでしかないのだが)そしてブルおじさんをはじめとしてトムとジェリーでは脇を固めるキャラクターも個性豊かで、基本的に「動物しか登場しない」というのも特徴的だった。
MGMがワーナーに吸収されたのち、チャック・ジョーンズ期で一際ドタバタコメディで人気を博すのだが(おそらく自分たちの世代で一番印象に残っているのはこのチャック・ジョーンズ期のはず)、ほとんどが動物キャラクターということと、唯一(と言って間違いないはず)登場するトムの主人(だったりお手伝いさんだったりする)が黒人女性であったことなどから、人権団体をはじめとしたさまざまな団体により多方向から責められ、結果骨抜きの「新トムとジェリー」を世に送り出し、それとともに人気も低迷していくことになる。トムがタバコを吸うことが教育上良くない、黒人の主人がトムをひっぱたくことが動物愛護の精神に反している、お手伝いさんが黒人の女性であることが人種差別に当たる。
こうした批判を受け、トムとジェリーは仲良くなり喧嘩をしない骨抜きになると同時に誰も見ないデッドコンテンツへと落とされてしまった。当時トムとジェリーに苦情を言っていた団体はこれで満足だったのだろうか?
批判も承知で正直に言いたいが、子供なんて非教育的なものほど面白いものだし、アニメーションの中で猫をひっぱたくシーンがあったからと言って、動物ですらなく存在もしない猫の「絵」を愛護する必要なんてどこにもない。
これが実写ならいくらでも批判されて良いだろうが、被害者のいない想像上の産物になぜ現実世界のロジックを持ち込んだのか、はなはだ理解に苦しむ。
良くアニメやゲームで「子供がまねをする」という苦情を聞くが、だったら漫画と現実の区別を教えて、子供がまねをしないように教育すればいいだけではないか?
それを放棄して子供の目の前から「反面教師になりえるコンテンツを消し去ること」が本当に教育的なのだろうか?単に子供が自分たちで考える判断力を奪っているだけのように思える。ずいぶん話が脱線してしまったが、今の子供たちがこういうアニメーションに触れる機会がないというのが非常に残念に感じる。
いい歳になった今でもトムとジェリーは色あせることなく、DVDを引っ張り出してきてはたまに腹を抱えて笑っている。
今の子供たちにとって、これだけ笑えるコンテンツ(アニメーションに限らず、バラエティなどもふくめて)がどれだけ残されているだろうか?ぜひもう一度、こういう何も考えずただ笑えるだけのコンテンツを、子供たちに与えられる世の中になってもらいたいものだ。